破裂 久坂部羊(著)最近、医療小説がとても流行っているけど、どれも医療現場を無理やりエンタメ化したような印象があってなかなか触手がのびず。
しかし、久坂部羊については、デビュー作の『廃用身』が小説とドキュメントの境界をいくような傑作だったので、平成版「白い巨塔」と呼ばれているこの作品も読んでみました。
一応、主人公はいるのですが、裏の主人公は“厚生労働省のマキャベリ”と呼ばれる佐久間。
彼は極秘国家プロジェクトとして、エリートの医者を起用し、日本の平均年齢を下げるようとする…
驚異の高齢化社会が到来し、国家が破綻する前に、寝たきり老人を減らすというもの。
その手術方法は、医学会でも未聞のもので、寝たきりの老人を瞬時に蘇らせる。
しかし、研究が完全でないために、あらかじめ仕掛けられたタイマーのように特定の期間後心臓を破裂させる。
「驚異の一旦回復をもたらす手術」
「痛みを感じずに突然死ねる手術」
国を救うのは、高齢化社会に危険なメスを入れる暗黙のプロジェクトなのか…
それとも
人命を限界以上に尊重する大衆の倫理感なのか…
現役医師 兼 作家が書いたこの小説、かなりラディカルです。
ラストの余韻が良かった。
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