非常階段東京




自然光と人工光が妖しく混ざりあう、東京の最も美しい表情がここにある

ビルの非常階段から東京の街を撮影する著者nによる待望の作品集。
黄昏に浮かび上がる雑然とした町並み、さまざまな表情。新しいものと古いものが同時にうごめき、最も美しい姿を現す瞬間。
大都市東京から放たれる底知れぬエネルギーを、幻惑的かつリアリティにとらえた快作。

寄稿:塚本由晴 (建築家 / 東京工業大学大学院准教授)

非常階段からの眺めは、あらかじめ設定されている観光名所などの展望台の眺めとも、パソコンで簡単に見ることが出来る衛星写真の率直な視線とも違っている。
街を歩き回り場所を見つけるといった肉体の運動を通して初めて獲得できるパーソナルな視点であり、高さも10階前後の中途半端な高さのため、街を見下ろすというより、水平に対峙して見る感じになる。
……非常階段の多くは裏通りに面しているため、東京の裏の顔が見えてくる。誰も来ない忘れ去られた階段から見た東京の裏風景はエロチックで、
撮影のたびにいつも興奮させられる一方で、自分は東京の風景を見ているつもりで実は何も知らない、ということに気づかされる。
(佐藤信太郎)