今日は海で寂しいことがあった。
灯台にいたのは僕ともう一人だけ。
最初むこうは「今日はなかなか魚が寄っていないねぇ」と話しかけてきて、
僕も「そうだねぇ」とよくある釣り場トークをしていた。
そして僕が釣りをはじめると、その人は2.3投していつの間にかいなくなっていた。
そのとき思ったのは、「結構、見切りの早い人だな…」くらい。
そのあと、釣り方を変えようと思って灯台に目をやると竿がなくなっている。
普段、心の中に使用頻度の少ない部分があるとすれば、今日は間違いなくそこがショックを受けた。
竿を盗られたという出来事よりも、小さなときから通っていた愛着のある場所でそんな出来事が起きたことに対して。
僕が無防備だったからといえばそれまでだけど、灯台は自分を無防備にできる数少ない場所のひとつだっただけにとても寂しい気分になった。